「Maker Faire Tokyo 2018」に出展しました
2018年8月4日(土)、8月5日(日)に東京ビッグサイトにて「Maker Faire Tokyo 2018」が開催されました。
「Maker Faire」はアメリカ発の世界最大DIYイベントです。
このイベントに、カブク社内の有志が「ものづくり部」として出展しました。
展示内容やその裏側について、出展レポートをお送りします。
展示内容
「ガンメンタイセン」という、顔でロボットを操作して遊ぶサッカーゲームを作りました。
次のような仕組みになっています。
ゲーム開始前:
1. 3つのコマンド(前進、旋回、後退)に対応する顔をWebカメラで撮影する
1. 撮影した画像の中からFaceDetector
を利用して顔を検出する
1. TensorFlow.jsで顔の画像を学習し、対応するコマンドに分類できるようにする
ゲーム開始後:
1. プレイ中のユーザーの顔を随時撮影し、学習済みモデルを利用してコマンドに分類する
1. MQTT.jsを使ってMQTTブローカー(Mosquitto)にコマンドを送信する
1. ロボット側でMQTTブローカーからコマンドをサブスクライブし、コマンドに対応する動作を行う
ロボットの筐体やカバーは3Dプリンタで作っており、カブクの持ち味である「AI」「IoT」「3Dプリンタ」が見事に組み合わさった展示になりました。
利用した技術や部品の詳細は以下のページに記載しています。
https://kabuku.github.io/makerfaire-tokyo-2018/
また、ソースコードは以下のレポジトリに上がっています。
https://github.com/kabuku/makerfaire-tokyo-2018
企画会議
出展応募締め切りは5/2(水)だったため、それに先立って4月下旬に、どのようなものを出展するか決めるための企画会議が開催されました。
AR、名刺の3Dプリント、VTuber、婚活(?)など、様々なアイデアが飛び交う活発な議論の末、最終的に「顔でロボットを操作するゲーム」を作ることに決定しました。
TensorFlow.jsのパックマンのデモを、ロボットを使って実現するようなイメージです。
ただし、この時点ではゲームのルールの詳細は決まっておらず、正直に言うと最終的にサッカーゲームになるとは思ってもみませんでした。
準備
ロボット
Raspberry piを使った理由
最初はESP8266かESP32を使って、MQTTの通信周りとサーボの制御を行う予定で実装を進めたのですが、スペック的に足りてないのかMQTTの通信が安定せずに、諦めてRaspberry Piを使う方向に舵を切りました。
通信まわり
ロボットとMQTTのブローカーの接続にはWifiを使っています。Raspberry Pi Zero WHは2.4GHzのWiFiモジュールを搭載しているので、2.4GHzのWiFiを使うのが一番楽なのですが、MakerFaireのようなイベントでは、2.4GHz帯が混み過ぎて不安定になるのを別のイベントで経験していたので、今回はUSBの5GHz帯が使えるWiFiモジュールを追加して5Ghz帯で通信するようにしました。5Ghz帯を使ったのが、功を奏したのかゲームプレイ中に一度も途切れることなく安定していました。ちなみにルータにはNETGEARのNighthawk X6Sを使用しました。Macbookのインターネット共有を使ってMacbookをルータ化した構成も試したのですが、接続が安定しなかったので、強いルータを使うことに決まりました。
WiFiのような無線通信は、検証環境とMakerFaireのような本版環境とでは、安定具合が大きく異なることが多いので、みなさんもお気をつけ下さい!!!
IoTと叫ばれているなか殆どの機器が2.4GHz帯を使っていることに凄い危機感を感じます。
電源まわり
当初の予定では、単3のニッケル水素電池を3個、昇圧回路で5Vに昇圧して、Raspberry Pi Zero WHとサーボ(FS90R)を2つ動かす想定で開発を進めていましたが、Raspberry PiにUSB接続の5G帯のWiFiモジュールを追加したところ、消費電流が増え5Vの昇圧が維持できず(3Vぐらいまで下がってしまう)にRaspberry Piがリブートしてしまうという問題が発生しました。そのため、Raspberry Piとサーボの電源は分けて、それぞれに単3のニッケル水素電池を3個使う合計で6個の電池を使う構成にしました。
筐体のこと
3Dプリントのカブクなので筐体ももちろん自作です。内部も外部も要件に合わせてモデリングし、社内の3Dプリンタで造形しました。内部の筐体は常に変わっていく要件に合わせてパーツの配置と固定、配線、筐体の最小化、強度のを満たすようにモデルをアップデートしていきました。最終的にこんな感じになりました。
混沌としていますが最善を尽くしました。
外部の筐体は内部に詰め込むパーツが膨れていった結果下図の左から右へと変化していきました。
初期の兜は弊社のベテランエンジニアが作ってくださったもので大変格好良かったのですが、実戦投入できず残念です。
格好いいモデルが作れるように勉強していきたいものですね。
マテリアルは一貫してPLAを使用しました。PLAのほかにABSとナイロンが候補に上がっていました。ABSは熱収縮が大きく、ネジ穴など多少誤差に厳しい要件で使いづらかったので候補から外しました。ナイロンは社内のプリンタでは出力したことがなかったので購入して試してみました。柔軟で強度が高くとても良いマテリアルだったのですが、プリントの安定性に問題を抱えたため断念しました。出力条件を整えて今後は積極的にナイロンを使っていきたいです。担当はポリカーボネートも気になっています。
フロントエンド
キモとなる機械学習部分はTensorFlow.jsのデモのコードを参考にできたため、それほど難しくありませんでした。
また、UI部分はデザインの得意なメンバーがとてもカッコイイUIを作ってくれました。上に貼った動画の14秒くらいから映っているので、ぜひご覧ください。
反省点としては、ReactやAngularなどのビューライブラリを使わずに作った結果、特に終盤では機能の実装コストがかなり高くなってしまったことが挙げられます。シンプルなアプリなのでなくても大丈夫だろうと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。普段どれだけそれらのライブラリに甘やかされているかを思い知らされました。
フロントエンドで一番たいへんだったのは、最後の最後までゲームのルールやロボットの操作方法が確定せず、度重なる仕様変更に対応する必要があったことなのですが、これについては次以降のセクションで説明します。
ゲームルール
当初の企画では戦国時代をイメージした陣取りゲームの展示を予定していました。フィールド内に散在するゲートをくぐると旗が立ち、ゲーム終了時にたくさん旗を立てていたチームが勝利、といった具合です。このルールには現実的な問題が2つありました。一つは、ロボットのサイズが肥大化していった結果ゲートをたくさん設置する構想に無理が生じてきたことです。日頃画面の向こう側に関心が向きがちなエンジニア陣にとっては斬新な障壁でした。もう一つは、我々が想像している以上にロボットの操作が難しかったことです。我々が試験した範囲では終ぞゲートをくぐることは叶いませんでした。そこで代替案として相手の城を崩すゲームが提案されました。MFT開催の一ヶ月前のことです。誰かが城作るのだろうと考えていたままMFT開催の十日前まで時間は進みます。ようやく安定して動作するロボットができたとき、そこにゲームフィールドはありませんでした。ゲームフィールドがないことに気づいたのはメンバーでランチに行ったときのことでした。そして、その場の超常的な話の流れでロボットたちはサッカーをやることになったのです。 ランチを終えた一時間後には仮設のサッカーフィールドが誕生し、後日適当に材料を買いだして本番用のサッカーフィールドが完成しました。
当日
当日は来場者の方々に絶え間なく遊びに来ていただいて盛況でした。試合終了後に試合中のお顔をピックアップしたgif動画を提供していたのですが、こちらも喜んでいただけたと確信しています。
実は,1日目のゲームは2人で1台のロボットを操作するようにしていました (パ●フィック・リムのような)。しかし,2人で連携して顔面操作するが難しいのと、ロボットの旋回速度が早くかつ旋回が止まるまでにラグがある関係でロボットの操作が困難で、誰も思い通りにボールに触れないという事態が発生しました。また,Webカメラにプレイヤーの顔以外のものが写り込んでしまう問題や,プレイ中に顔の位置が大きくズレると言う問題もありました。そこで、1日目から2日目にかけて、次のような大幅なアップデートが施されました。
- 1人で1台のロボットを操作できるようにする
- ロボットの旋回速度を遅くする
- Webカメラから取り込んだ画像から顔だけを抽出する
これらのアップデートの内容は、1日目の夜の打ち上げのお酒の場で決まったものでした。打ち上げが終わったのは午後10時頃でしたが、その後日付が変わってからSlackに次々とpull requestの通知が上がってくる様は、涙なしに見れたとか見れなかったとか。
この甲斐あって、2日目はゲームの操作性が大幅に向上し、ゴールが次々と生まれるエキサイティングなゲームになりました。
良かった点
– 楽しんでもらえた。みなさんが惜しげも無く変な顔をしてくれて嬉しかった
– サッカー風のゲームにしたこともあって分かり易かった
悪かった点
– ロボットの操作が難しすぎて梅原大吾か高橋名人でないとまともにプレイ出来なかった (2日目に改善)
– ロボットの旋回速度が早くかつ旋回が止まるまでにラグがある。2日目は旋回速度を遅くすることで対応
終わりに
たいへんなこともありましたが、充実した2日間でした。エンジニアとしても得るものがたくさんありました。
当日遊びに来てくださった方々や、制作の過程でご協力いただいた社内の非エンジニアの方々に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!
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